無名の運転手の日記 T

[編集]
【掲載月】 2001年5,6,7,8,9,10,11,12月/2002年2,3,4,7,8月/2003年4,5,6,7,9,12月/2004年4,5,10,11,12月/2005年2月
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
* 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月
* 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月
* 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月
* 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月
5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月
6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月
7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月
8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月
9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月
10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月
11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月
12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月
2001年 10月

 1
 日記
 2  3  4  5  6
 7  8  9 10 11 12
 日記
13
14 15
 日記
16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
日 付題 名
10月 1日(月) 9割の幸福と1割の不幸・・・。
10月12日(金) 34歳の課長さん・・・。
10月15日(月) 自分が欲しい方を、お友達にあげる・・・。



  2001年10月 1日(月)   9割の幸福と1割の不幸・・・。
住宅街で、ご年輩の女性お二人がご乗車になった。
行き先は「銀座○越前」である。それ程着飾ってはおられない。
しかし、お話の仕方等で、お二人とも、かなりの資産家の奥様であることが分かる。
「億」単位の金額のお話が、普通の会話の中で為されている。
最近も、遺産分けで、親類縁者の間で骨肉の争いが有ったようである。
ご親戚の方も、多くの会社を経営されていて、最近、リタイアされたそうである。
その方は、退職金を三つの小切手に分けて、仏壇に供えており、毎朝その小切手を眺めては
嬉しそうに笑っているという。
可愛い可愛い3人の孫娘に、資産を均等に分け与える為に、退職金も3等分にしたそうであ
る。
さて、その可愛い孫娘の中のお一人は、お顔立ちは女優の「山本○子」さんにそっくりで、いつ
も最上級のお召し物を着せて貰い、家事も全部使用人任せで、今後の生活も何不自由ないほ
どの財産を、既に生前贈与されているそうである。
ところが、その方のお口からは、いつも「不平不満」しか発せられないと言う。
自分は籠の鳥であり、いつもお爺様から自由を束縛されていて、ちっとも楽しくない毎日を送っ
ており、愚痴をこぼすことしか考えていない、と言う。
ここで、お客様のお一方が語気を強めて仰った。
「○○子さんは、9割は幸福なのよ。だって、世間の皆さんが一番苦労している、お金については、一生、何も心配が無いのだから・・・。」
もとより、人生の幸・不幸を割合で表現できるモノでは無いが、確かにそのお孫さんは、傍目から見たら、9割の幸福を得ているのかも知れない。
金銭的な苦労は一切無く、美貌に恵まれ、肉体的な病に苦しんでいる分けでもない。
残された、1割の「不幸」の部屋に閉じこもり、我が身の不運を嘆いているそうである。
この方にとっては、9割の幸福よりも、1割の不幸が堪えられないのである。
ご本人には、「9割の不幸」と「1割の幸福」となってしまっている。
では、私自身はどうか。
自分も1割の不幸を、嘆いてはいないだろうか・・・。
[index]

  2001年10月12日(金)   34歳の課長さん・・・。
深夜の表参道で、男女のカップルの方がご乗車になった。
最初は恋人同士かと思ったが、お話から、上司と部下の女子社員だと分かった。上司と思われる男性が、若い女性に大変細やかに気遣っておられる。
話し方も優しくて、傍らで聞いていても好感を覚える。
お仕事が遅くなって、上司が食事を御馳走しただけのようである。
帰宅方向が同じと言うことで同乗された女性が途中で下車されて、その後は男性の目的地に向けて車を進行させた。
社内で、男性が丁寧な口調で語りかけて来られた。
「今日は特に遅くなってしまったので、最終電車に乗り遅れました。駅に自転車を置いているので、駅に行って下さい。」と言う指示であった。
途中の曲がる地点の目標等も、実に懇切丁寧に教えて下さった。
普段は、最終電車で帰宅して、4〜5時間寝て、又早朝の電車で出勤しているそうである。
「運転手さん、私今度、課長になったんですよ。しかも、主任から係長を飛び越えて一気に課長に抜擢されたんです。それだけでも、前例がないそうですが、34歳の課長というのも、初めてだそうです。我が社は3,800人の社員がいる大手ですから、課長にはナカナカ昇進できないのが普通なのです・・・。」
私には、その方が何故、課長に抜擢されたか、分かるような気がした。
先ほどの女子社員にも、「まごころ」で接しているのがよく分かった。
営業のお仕事をされているそうである。
部下にも敬語を使ってしまうそうである。運転手の私にも敬語である。
こういうお人柄と誠実さが、この方の上司の全面的な信頼を得たからこそ、前例の無い、34歳での課長に抜擢されたのだと思えた。
目的地の駅に着き、料金支払の段で、お手元が暗いので車内灯をつけた。
その方のお顔を見ると、実際のお年よりも、10年は老けているように見えた。
それ程、ご苦労されて来られたのであろうし、これからも、それに立ち向かって行ける方だとお見受けした。
「我が社は、今、大変に利益を上げていて、忙しくて殆ど休みも取れないのです。」と言いながら下車された課長さんに、こころから「ご苦労様です」と申し上げた。
「企業は人なり」という言葉を思い起こした。
[index]

  2001年10月15日(月)   自分が欲しい方を、お友達にあげる・・・。
夕闇迫る街角で、年輩の女性がご乗車になる。
この地区では有名な某一流ホテルの女性経営者であった。
若いホテル従業員に対する躾が、このご時世では大変に難しくなって来ているそうである。
家庭や学校で「個人の自由」を尊重されて育った世代には、躾がイジメと勘違いされてしまう場合もあって、そう言うときにはお互いに納得できるまで、徹底的に話し合っているそうである。
とくにお客様よりも、従業員としての自分の立場を尊重してしまって、お客様とのトラブルが発生したときには、翌日、その従業員が明るい笑顔で出勤できるようになるように、心掛けておられるそうである。
お互いに納得が出来るまで話し合って、「翌日に持ち越さない」ということを信条にして、ホテル経営を続けて来られたそうである。
その方は、小さい頃にお母様から、いつもこう言われていたそうである。
同じようなモノが二つあって、どちらかをお友達にあげるときには、「自分が欲しいと思った方を、お友達にあげるように・・・」と。
その方は、今でもその教えを守っておられて、お友達には必ずご自分が「欲しい」と思う方を差し上げているそうである。
「そう言う気持ちの積み重ねで、今のホテル経営が成り立っているのよ。」、と仰っておられた。

「お友達が一番大切だから、良い方をお友達に差し上げるのです。」
 
ホテルに到着すると、従業員が笑顔で車のドアを開けてくれた・・・。
[index]
CGI-design