無名の運転手の日記 T

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日 付題 名
8月 1日(木) 聞きかた上手・・・。



  2002年 8月 1日(木)   聞きかた上手・・・。
休日の午後である。
渋谷の坂を上りきった交差点を通りかかると、小柄なご高齢の紳士が手を挙げておられる。
白の夏用スーツを着用されていて、ネクタイの結び目が印象的である。
とても上品に着こなしておられるので、この方は洋品店のご主人なのではなかろうか・・・。
目的地をお尋ねすると、実に明確に指示をされた。
「運転手さん、この先の○○ビルにお願いします。」
発車をすると、お客様は携帯電話をご使用になって、色々とお相手に指示をされている。
その口調が実に的確明瞭で軽快である。
ある団体名を告げられたので、この方は洋品店のご主人ではないのかも知れない。
電話が終わってしばらくして、私はお尋ねした。
 「大変にお元気ですね。失礼ですがお幾つになられますか?」
「90歳です。」
 「お客様のようにお元気なご高齢の方をお見受けすると、私は嬉しくなります。」
紳士はにこにこして私のお話を聞いて下さった。
 「やはり毎日、何か生き甲斐を持って生活することが大切です。」
 「お客様もきっと、なにか大切なお仕事をされているのだと思います。」
私は、如何にして健康で生きていくことが大切であるかについて、ご高齢の紳士に話し続けた。
その間、紳士は頷きながら微笑んで私の主張に耳を傾けて下さった。
目的地に着いて下車をされると、紳士は立ち止まって、私にお辞儀をして下さった。
車を下車されたお客様から、丁寧にお辞儀をされるのは初めてである。
お辞儀の角度は浅からず、深からずで実に適切である。
私も丁寧に頭を下げた。
それから3日後、欲しかった「本」を求めに書店に立ち寄った。
話題になっている書籍が、山高く積み重ねられていた。
その本の表紙には、見覚えのあるネクタイの結び目とお顔が・・・。
書店でしばらく立ちつくしていたが、冷や汗が流れてきた。
私が求めていたのは、あのお方が書かれたご本であった。
やはり、聞きかた上手なお客様であった。
赤面・・・。
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