無名の運転手の日記 T

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日 付題 名
9月 5日(金) 「こんな」・・・。



  2003年 9月 5日(金)   「こんな」・・・。
金曜日の深夜に、駅近くの路上で二人連れの男性がご乗車になった。
少し走行してから、お客様との間でコミュニケーションが始まった。
お二人は同じ会社の仕事仲間で、先輩と後輩と言うことであった。
コースは先輩のご自宅の方が近いのだが、後輩の方は「先に自分の家に寄って貰いたい」、と主張をされている。
後輩の方のご自宅はかなり遠方である。
通常はお近くの方が途中で下車されてから、遠方の方のご自宅に向かう。
後輩の方は、帰宅後に少し仮眠してから出かける予定があるので、自分の方が早く帰りたいそうである。
先輩の方は、「運転手さん、私の方が近いので先に私を降ろして下さい」と私に注文をされた。
お互いに「自分が先だ」と言い張ってどちらも譲らない・・・。
ところが、予定していたコースの途中の道が工事による大渋滞で全く動かないことが判明した。
そこで急遽、先輩の方の道案内で裏道を通るコースに変更することになった。
先輩はご機嫌になって、ご自分のお宅の方角に車を誘導する。
後輩の方はおおいに不満を漏らしていたが、やがて先輩のご自宅に到着して先輩は下車をされた。
今度は後輩の方のご自宅に向かって車を発進させる。
先ほどまで先輩と楽しく会話をされていた後輩の方は、今度は私に話しかけてこられた。

「運転手さんは、前はサラリーマンだったのですか?」
私「はい。今はこんな仕事をしておりますが、以前は・・・」

それから世間話をしばらく続けていたが、お客様が急にこう仰った。

「運転手さんはさっき『こんな仕事』って言っていたけど、それは違いますよ!」
「深夜に我々がいくら酒に酔っていても、こうして自宅に帰れるのは、運転手さん達のお陰なんですから・・・。」
「運転手さん達が眠いのに頑張ってお仕事をしてくれているからなんです。ありがたいと思っていますよ。」
「ですから『こんな仕事』なんて言わないで下さいよ。」

私は軽い気持ちで『こんな』という表現を使ってしまったのだが、自分の気持ちの中にそのような意識があることを否めない気がした。
確かに『こんな』という言葉は否定的な意味合いに用いることが多い。
「♪こんな女に誰がした」という歌もあった。
「こんな人」、「こんな家」、「こんな会社」、「こんな食事」、「こんな服」、「こんな人生」etc・・・。

私も『こんな自分』が嫌になるときがある。

でも、本当に『こんな』なのであろうか?
そこに少しでも感謝の気持ちがあれば、『こんな』とは言えないのではなかろうか・・・。

「運転手さん、ありがとうございました。今日は癌で入している母の病院へ行かなくてはならないのです。お陰様で早く着いたので少し仮眠できます。」

お客様は私にお辞儀をしてから下車をされた・・・。
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