無名の運転手の日記 T

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日 付題 名
10月22日(金) 一枚のチョコレート・・・。



  2004年10月22日(金)   一枚のチョコレート・・・。
携帯電話で通話中のご婦人が手を挙げている。
ご乗車をして目的地に向かう途中でご婦人が私に声をかけて下さった。

「運転手さんはチョコレート、お好きですか?」
 私は毎晩コンビニでチョコレートを買っているほどのチョコ好きである。
「はい。チョコレートは好きです。」
 するとご婦人はバッグから一枚のチョコレートを出して私に下さった。
「実はパチンコの景品なのよ。久しぶりにやってみたら沢山出ちゃって・・・。」
 あまり玉が出るのでパチンコに熱が入ってしまい、とうとう待ち合わせの時間に遅れてしまったという。

目的地に到着してご婦人はお降りになった。
助手席には先ほど頂いた一枚のチョコレートがまぶしく輝いている。
交差点を曲がると一人の女性が私を見つめている。
両手に荷物を持っているので手が挙げられないようであった。
その表情から察して車を寄せてみると、女性は苦しそうにしながらも私に笑顔を見せた。

「実は救急車を呼ぼうかと迷っていたんです。○○病院へお願いします。」
 痛みが激しくて脂汗が止まらないと言う。
 お一人でご乗車になるのかと思ったら、小学校3年生くらいの女の子が一緒であった。
 女性はランドセルを背負った女の子の母親のようである。
 病名を伺うことはしなかったが、お話によると緊急入院になる可能性があるという。
 
「大人の方とお話をしていたら少し落ち着いてきました。」
「運転手さん、色々と大変でしょうね・・・。」
 女性は運転中の私に優しい言葉をかけ続けて下さった。

「おばあちゃんには『入院するかも知れない』って言わないの?」
 女の子が母親に問いかけた。
「おばあちゃんが心配するからまだ言わない方が・・・。」
 女の子はだまっている。

私は先ほどご婦人から頂いたチョコレートを女の子にあげることにした。
この女の子に渡すために私がご婦人から一時的に預かったようにも思えてきた。
お母さんの診察を待合室で待つ間に女の子に食べて貰えたら・・・。

 車は緊急受付の場所に到着した。
「これはおじさんからのプレゼント・・・。」
 私は一枚のチョコレートをお釣り銭と一緒に手渡した。
 女の子はとても喜んでくれて大きな声で「ありがとう」と言って降りた。
 お母さんは苦しそうにしながらも微笑んでお辞儀をしている。

夜になり、駅前で一人の若い男性がご乗車になった。
男性はしきりに私に声をかけて下さった。

「運転手さん、色々なお客さんがいて大変でしょう?今日はどんなお客さんがいましたか?」
「今日は急病人を病院までお乗せしました。」
 ご婦人からチョコレートを頂いたこと、そしてそのチョコレートを女の子にあげたことをお話しした。
 その後も若い男性は私に色々なことを問いかけてきた。
 
 目的地に着くと男性は受け取った釣り銭の中から一枚の紙幣を私に差し出した。
「これ、僕からのプレゼントです。」
 男性は笑顔で手を振って車を降りて行かれた。

 そこに置かれた紙幣は、頂いた一枚のチョコレートと同じ大きさであった・・・。
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